中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

2022-01-01から1年間の記事一覧

心も躍りだすリズム『ピアノをきかせて』(小俣 麦穂)

日本児童文学者協会新人賞受賞作であり、 2019年入試では3校で出題されてる。 家族愛があふれる良質な児童書なんだが 主人公の母や姉とは対照的に描かれてる 音楽を心から楽しんでる人達に要注目だ。 俺のレビューの出だしはこんな感じっす。 主人公は…

向学心がとまらない『このそらのずっとずっと向こう』(鳴海 風)

外国では女の人も大事にされ、立派に仕事をしています。これからの日本にも、そのような女の人が必要です。(本文より) 読書感想文コンクール課題図書になった こともある作家の新作なんで読んでみた。 学びたい気持ちをおさえられない少女が 外国語を習得…

天才児にとっての中学受験『才能の見つけ方 天才の育て方 アメリカ ギフテッド教育最先端に学ぶ』(石角 友愛)

親が全くギフテッドに関して無知であった場合、悲しいことですが、子どもを「扱いにくい問題児」とみなしたまま一生を終えてしまうこともあるのです。(本文より) ギフテッドとは簡単に言えば天才児だな。 尋常でないこだわりが彼らの多くにあり、 それが上…

忘れられない7日間『図書室のはこぶね』(名取 佐和子)

でもわたしはこの頃、つくづく考えちゃうのだ。意味のあることだけをする人生って、案外袋小路じゃないかなって。(本文より) コチラさん、たまに出題予想する方だが、 『神さまのいうとおり』みたいに前触れ なく出題首位になる本も当ててんだよな。 そん…

いいぞ、ジャイ子!『ちいさな宇宙の扉のまえで: 続・糸子の体重計』(いとう みく)

人ってそんなに強くないから、確かめたくなるの。自分は必要とされているかとか、愛されてるかって。気持ちが弱いときほど強烈にね。(本文より) 割と入試で出ているいとうみくの新作だ。 続編だが、前作を読んでなくても大丈夫。 無遠慮でがさつな糸子と同…

難関狙いの本好きには『櫓太鼓がきこえる』(鈴村 ふみ)

『櫓太鼓がきこえる』(鈴村 ふみ/集英社) 今年の公立高校入試でよく出題された本。 相撲への見方をガラリと変える衝撃作だ。 公立高と中受は作品がかぶりやすいけど、 この本は難関から最難関レベル向けだな。 相撲の取組前に、ひがしーあざぶやまー とか…

出題されるかもしれない新刊本(2022年6~7月)

入試頻出作品は前年の春から夏にかけて 出版された本になるケースが多いんだわ。 逆に秋以降発売の本が出ることは少ない。 夏ごろに作問する例が多いらしいからな。 桜蔭中みたいに秋から冬に出た本からも 出す例ってのは稀だと考えていいわけよ。 となれば…

コレ、凄いよ『シャンシャン、夏だより』(浅野 竜)

いろいろ大変なことが多くて、農業には未来がないように思えるけど、それは浅い見方でね。もっと長い目で見たら、農業には、明日はなくてもあさってがあるんだって。(本文より) ちゅうでん児童文学賞の大賞だった作品だ。 前年の受賞作品は今年の出題校数…

だらけ小6男子、目の色を変える『風の神送れよ』(熊谷 千世子)

『風の神送れよ』(熊谷 千世子/小峰書店) 地域に伝わる伝統行事にやる気のない子が 駆り出され責任ある立場になって変貌する。 子どもたちが協力し合い共に成長する話だ。 いかにも出題者が好みそうな要素を含むが、 読書感想文コンクールで高学年課題図書…

コピーライターと小6女子の不思議な関係『ソラモリさんとわたし』(はんだ 浩恵)

言葉にできない思いってあるし、それは言葉と同じくらい大切。(本文より) 図書館司書がやたらと推すから読んでみた。 新人の新作なんで出題実績はトーゼンない。 面白すぎるんで調べてみたらフレーベル館 ものがたり新人賞大賞作品だったんだな~。 少女が…

子どもの気持ちに寄り添った『#マイネーム 』(黒川 裕子)

駒場東邦等で使われた実績のある作家だが、 公立高校入試でも割と出題されてるようだ。 高校で出る作品は中学入試でも出てくるし、 『天を掃け』あたりは最注目作品っぽいな。 この先生、はてなブログを持ってたりする。 令和二年(2020年)国語入試出題情報…

【本気レポート】涙をチカラに変えて ~或る早稲アカ女子の疾走~

「ありがとうございました!」 校舎の受付に喜びの声が響きわたりました。塾生親子の腹の底からの感謝に、その場にいた全員が弾かれたように立ちあがり、とびっきり大きな声で応じます。 「ありがとうございました!!」 歓喜で教室が満たされた瞬間です。 …

出題が予想される物語文『夏の体温』(瀬尾 まいこ)

もう俺、小学三年生だよ。可能性がないこと願ってるより、この身長で生きていく方法を考えないとさ。(本文より) 中編2本、短編1本という構成の作品集だ。 頻出作家の最新作でしかも出題しやすそう。 ラストの短編『花曇りの向こう』もいいが 表題作『夏…

溢れんばかりの家族愛『母さんは料理がへたすぎる』(白石 睦月)

なさけない、みっともない、やるせない。いいじゃん。それでいいんだよ。(本文より) 2021年入試で出題数3件だった作品だ。 家族愛溢れる本なんだが、特に注目なのは 少年の小学校時代を描いたプレゼントの章。 学校が舞台になるシーンが一番活き活き…

不和解消で東洋英和『カリスマ塾長直伝 中学受験に大成功する「家庭の戦略」』(須野田 誠)

父親と母親の呼吸が合っていない環境に子どもを長く置くと、まず伸びません。(本文より) 早稲アカ創業者が書いたちょっと古い本だ。 家庭内不和で成績不振になった家庭の子が 両親の歩み寄りで勉強に集中できるように なり、東洋英和に受かった美談とかも…

コロナ時代の中学生活『マスクと黒板』(濱野 京子)

逃げるのは恥ではない。そう思いたい。向き合うことばかりが肯定されるのはきつい、という考えのほうが腑に落ちる。(本文より) そこそこ入試に出る作家の4月発売の新作。 絵を描くのが好きだけど美術部には内申の ために一応入ってるという中2が主人公だ…

スマホを持たせる時期に読ませたい『嘘吹きネットワーク』(久米 絵美里)

結局みんな、自分で体験して、自分で痛い目を見なければわからないのだろうか。(本文より) 学校司書の方がいかにも入試に出そうとか 言ってたんで、思わずチェックしてみたわ。 確かに学校での会話シーンが使いやすそう。 嘘の是非を語り合う場面とかも要…

渋谷幕張中で出題『星影さやかに』(古内 一絵)

あとにもさきにもあんな立派なおなごには会っだこどがねえ。本当に真の姫君でがした。(本文より) 今年の渋谷幕張中で出題された高難度作品。 戦前から戦後という時代背景の上に方言も あるんで並の小6では歯がたたなそうだわ。 難関校以外での出題はない…

それぞれの片想い『ソノリティ はじまりのうた』(佐藤 いつ子)

2020年入試で出題4位、筑波大附属や 鴎友学園で使われ今年も専大松戸で出てる 注目作家の先月発売されたばかりの新作だ。 合唱を通じてまとまっていく中1を描いた 青春群像劇なんで素材として使いやすそう。 合唱を扱う入試出題作は少なくないからよ。…

泣ける子は強い

たま~に真面目に書いてるブログ紹介記事。 次回は以下の内容で夏までに書くつもりだ。 『涙を強さに変えて ~ある早稲アカ女子の疾走~』 (参照元:不屈の闘志 -娘と私の2年間 偏差値35からの中学受験- (mangetsu-mama.com)) なぜこんな早くから予告して…

桜蔭中で出題『そらのことばが降ってくる: 保健室の俳句会』(高柳 克弘)

短歌や俳句なんかを扱う作品も中学入試で 出まくりだから、覚えとくといいかもな? ちょっと思いつくだけでもこんだけあるし。 『南風吹く』(森谷 明子) 『私の空と五七五』(森埜 こみち) 『リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ』(こまつ あやこ) …

出題が予想される物語文『かぞえきれない星の、その次の星』(重松 清)

きみたちは、目に見える範囲では一人でも、一人ぼっちじゃない。 (『かぞえきれない星の、その次の星』所収の短編『ともしび』より) 重松清は頻出作家だけど新作からバンバン 出題される訳じゃなく古い作品からが多い。 しかしこの11編の新作短編集はい…

わたしは何者なんだろう『境界のポラリス』(中島 空)

講談社児童文学新人賞の佳作だった作品だ。 大賞該当作のない年度の受賞作ではあるが 異文化理解だとか外から見た日本人という テーマってのも重要っぽい部分があるわな。 5歳で来日してつらい小・中時代をすごし 人間関係をリセットするために、わざわざ …

志望校で出る作品は当てられない

昨日は模試の出題なら当てられると書いた。 ただ、実際に受ける学校で出る本ってのは ほぼ確実に当たらないと思ったほうがいい。 入試の出題者には、頻出作品を狙って出す 動機がないし、旧作も中受界隈でだ~れも 気にしてない作家の作品も実際出るからよ。…

模試に出る作品は当てられる

模試で出る作品は割と当てやすいんだよな。 頻出作家の新作や賞とった本を追ってれば かな~り高い確率でヒットしてくるからよ。 なぜそうなるかというと、そういう作品は 本番入試で出題件数上位になりやすいから。 塾側もよく出る作品を当てにくるわけだな…

クネクネ踊るわけじゃない『スネークダンス』(佐藤 まどか)

なーに言ってやがる。それよりさ、将来まわりにだれか苦しんでるやつがいたら、力になってやれよ。そうやって世の中はまわってるんだよ。(本文より) 海外在住で芸術への造詣が深い作家の新作。 『一〇五度』『アドリブ』など出題実績は それなりにあるんで…

答えはすぐには見つからないさ『屋根に上る』(かみや としこ)

何もできなくてもいいんだよ。たった一人でいい。つらいときに気にかけてくれる人がいれば、問題が解決できなくてもずいぶん救われるんだよ。(本文より) 受験業界じゃノーマークの著者だろうけど 児童文学の賞をとった新作だし出るかな? 今年の入試で出題…

やはりデータはモノを言う『偏差値が届かなくても受かる子、充分でもちる子 必ず合格できる学び方と7つのルール』(akira)

小6の年間平均偏差値以上の学校に進学した生徒は約8割にものぼります。(本文より) 2012年に日能研カリスマ講師が出した 本だが偏差値を徹底的に語る部分は新鮮だ。 偏差値は推移を見るべきで、1回の結果で 一喜一憂しても仕方ないし、まして志望校 …

おアツい共学中学校『タブレット・チルドレン』(村上 しいこ)

年月が経てば価値観も変化する。一緒に変われなければ、どちらかが取り残される。(本文より、夫婦について述べたくだり) そこそこ入試に出る作家の3月発売の新作。 タブレットで同級生と子育てをする課題で 色めき立つ教室がほほえましかったりする。 お…

駆け上がれ、不安も不満も吹き飛ばせ!『階段ランナー』(吉野 万理子)

学校の中心で活躍している優等生たちよりも、輪からはみ出て心配をかけさせた子どもたちのことをなぜかより多く覚えています。(本文より、元教師の言葉) たま~に出題される作家の1月発売の新作。 高校生男女の挫折と再起を描いた作品だわ。 この作者の作…