もう私お姉ちゃんの受験イヤだ。受験が近づいてから家の中がずっと変だもん。(本文より)
今期出典予想ランキングでは下位だけど
今年最も楽しんだ作品はコレなんだよな。
俺がノリノリでレビュー書いた翌月には
合不合判定テストの素材にもなっていた。
その著者が来春、中学受験小説を出すよ。
見たことない方向に話が進むので新鮮だ。
主人公の友人や塾の先生、父親の言葉に
ハッとさせられる瞬間が幾度もあったわ。
難易度は難しいが教育虐待の話ではなく
素材文に使えそうな箇所が盛りだくさん。
志望校のことで家族会議するシーンとか
中学受験の意義を語る父娘の会話パート、
あとは塾友・講師とのやり取りも要注目。
小説トリッパー連載作なんで作問者には
もう読んでる先生もいるかもしれないな。
とりま俺のレビュー全文を添付しておく。
『二月の勝者』ロスの人にも、そうでない人にも薦めたい家族愛の物語。
同じ吉祥寺が舞台ですが、今までにない中学受験小説でした!
主人公は傍目に恵まれた家庭にしか見えない家で、ひとり思い悩む小学生。
4年生で受験のレールに乗せられ、塾にはすぐに馴染む彼女ですが、6年生になっても意欲は湧かないまま。
そんな彼女が情緒の臨界点を越え、驚きの目標を掲げ、目の色を変えて動きはじめます。
アツい!
しこりをはらみつつ歩んでいた家族が、重大な決断を機に変わっていくさまが猛烈にアツい!
歯車が噛み合いだしてからの疾走感に、読む手が止まらなくなりました。
一方で、入試の本番や合格発表のくだりでは、ドキドキが余りにも胸に響いてくるので、何度も、何度も、中断して息を整えましたよ。
この物語、リアリティがありすぎる!
家族関係だけでなく、受験が近づくにつれ塾友たちが煮詰まっていくさまも迫真でしたね。
そんな中、絶妙にズレていてほっこりさせてくれる例の店長さんが出てきたのは救いでしたよ。
書店員さんとの迷コンビぶりも健在!
受験や子育てだけでなく、生きていくうえで大切な気づきが散りばめられていた点も魅力でした。
特に、前半と後半にある体験記を扱うくだりで、父の信念がこぼれ出る場面には共感しきりでしたよ。
不穏さを纏いつつ流れるストーリーはどこに漂着するのか?
彼らは、彼女らは、過酷な道のりの先に何を見るのか?
少女を駆り立てたものの正体とは?
注目ポイントを数え上げたらきりがありませんね。
母の計算されたふるまいや、妹のナチュラルな名優ぶりにも注目ですよ~。
こんなにも主体的に私立の中学に行きたがっている子がいることに十和は鮮烈なショックを受けた。(本文より)