中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

クセ強ッ、けれど病みつきに!『父の回数』(王谷 晶)

今週発売されたばかりの異色の短編集だ。

 

入試では見たことがない作家ではあるが

表題作が高校生視点なんで読んでみたわ。

 

何にも熱くならず空気を読めない少年が

驚きの事態に巻き込まれていく短編だよ。

 

ま、ちょっと小学生に見せづらい部分も

あるにはあるが引き込む力がみなぎる話。

読めば終盤の展開にゼッタイ驚かされる。

 

面白さはタイムリープ物『リワインド』。

これが抜群に感情移入できる作品だわ~。

 

全力で挑む人助けが激烈に刺さるからよ。

 

あえて物語という虚構を美しくさせずに

ビターさを持たせるのが全体の作風かな。

 

なにもかもうまくいくなんて嘘くさいと

感じるようなタイプだとよりハマりそう。

 

難易度分類では難しいに該当するレベル。

俺のレビューの一部をまた紹介しとくな。

 

普通とはひと味もふた味も違う、さまざまなカタチの家族を描いた小説集。

 

ダイバーシティファミリー小説って何?と思いつつ手にしましたが、多様性の枠を軽々踏み越えてますね~。

新鮮そのものの読書体験になりましたよ。

 

「知らない誰かの不幸が、僕の生活を救った」

表題作『父の回数』にある、このフレーズには眉間を射抜かれました。

 

人の不幸が俗に言う”蜜の味ではなく、魂の救済になるという視点。

これが自分にはまるでなかったのですが、ストンと腑に落ちたんです。

 

共感しづらいと感じていた主人公が、にわかに身近に感じられた瞬間でした。

 

中学生以上に推したい(2025/4/23発売)

 

行きたくもない飲み会に山ほど出てきた元営業職の中年をなめるなよ。絶対に二十分で好かれてみせる。(『リワインド』の本文より)