中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

心に勇気を灯してくれる『ひとりかもしれない』(岩瀬 成子)

わりと入試に出る作家の6月発売の作品。 難易度は3~4年でも十分いけそうだよ。 この先生ってば、いつも思うんだけどよ、 中学年の子に心情の揺れを伝えるのって 言葉選びからして半端でなく難しいけど 今作でも見事にやってくれてるんだわ~。 特に子ど…

アクシデントが最高すぎる『カーテンコールはきみと』(神戸 遥真)

まったくちがう役をやれば自分を変えられると思っていた。でも実際はそんな簡単じゃない。(本文より) 出題はまれだけど注目してる作家による 今週のなかばに書店で並び始める新作だ。 意外な組み合わせの二人が困難を越えて 崖っぷち演劇部に新しい風を送…

【2024年入試版】国語出典予想ランキング(2022年9月~2023年8月発売)

過疎自慢のサイトからひっそりお知らせ。 作品の優劣ではなく出題者が選びそうか。 この点のみで順位付けしたリストが以下。 全てここでレビューを書いた作品たちだ。 表の説明はちょっと真面目に書いてみる。 出典予想ベスト100(1~50位) 私の勘で選んだ…

画期的な中学受験小説『小さな挑戦者たち』(騎月 孝弘)

4人の中学受験生に寄り添うストーリー。 この子たちが、みんないい子なんですわ。 読めば応援せずにいられなくなるほどに。 主人公もがんばり屋さんで共感できるし。 中学受験の心構えを伝えることを主眼に 描かれた小説って点では素晴らしいな~。 使えそ…

ラストがそそる、技アリ素材『後ろの席の菊池さん』(名取 佐和子)

有力作家によるちょうどいい長さの話が いくつも詰まっている季刊『飛ぶ教室』。 ここからの出題が割とあるのは有名だな。 今回は71号から74号が検討対象だよ。 発売時期は昨年の10月から今年の7月。 特に素材文適性が高そうだったのがコレ。 短編の…

どえらいコラボ効果『川滝少年のスケッチブック』(小手鞠 るい)

九十代のおじいちゃんはぼくの隣に座っているのに、スケッチブックのなかでは、十二歳の少年が受験に挑んでいる。(本文より) 著者の祖父が描いたスケッチを元にして、 戦時中の生活をリアルに伝える異色作だ。 絵だけでも小説だけでもできないことが コラ…

今週発売の中学受験小説の話題など

今週『小さな挑戦者たち』が発売される。 4日か6日のどちらかに出るっぽいけど アマゾンが6日としてるんで、書店には 前日の5日には並ぶんじゃねーのかな? ま、手に入ったら早めにレビュー予定だ。 予定といえば、今月は中旬に出典予想の 2024年版…

さびれゆく町で『夏に、ネコをさがして』(西田 俊也)

思い出は自分を守ってくれる大切な友達みたいなもの。(本文より) 老人の多い町に来た少年の夏休みを描く まれに出題される作家の5月の新作だわ。 そのまんまタイトル通りの話ではあるが ネコ好きにはたまらない一冊だと思うよ。 戦時中に犬猫だけでなく学…

巡り合わせの妙『月の立つ林で』(青山 美智子)

これまでにも何度か言ってきたことだが 売れてる短編集の子どもが主人公の話は 大人向け作品でも入試でよく選ばれるよ。 寺地はるな先生のコレなんかもそうだな。 さて、昨年11月に出た今回紹介の本は 本屋大賞5位だからばっちり当てはまる。 特に『ウミ…

人生の幅を広げてくれる『アンドロメダの涙 久閑野高校天文部の、秋と冬』(天川 栄人)

百人のいいね!よりたった一人の、なんてことない一言が嬉しい。(本文より) 界隈では新顔だが文学賞の受賞もあって いま勢いのある作家の9月の新作ですわ。 好評だった前作の続編が今回の紹介本だ。 序盤で前作のおさらいがあるから最初に この本を手にし…

いつも心にコンパスを『波あとが白く輝いている』(蒼沼 洋人)

講談社児童文学新人賞の佳作入選作だわ。 最近のこの賞は、今年の大賞もそうだが プロ作家が別名義で応募してる例が多い。 ゆえに最終選考にはプロがゴロゴロいる。 だから佳作でもハードルがもの凄く高い。 しかも本作は改稿で弱点を修正していて 生まれ変…

あふれ出る本への愛『5分で本を語れ : チームでビブリオバトル!』(赤羽 じゅんこ)

自分の好きな本について、たくさんの人に聞いてもらいたい。(本文より) 話し下手な少年が友人たちの助けなどで みるみる変わっていく爽やかストーリー。 稀に出題される作家の来週発売の新作だ。 小4あたりから読めそうな感じなんだが 中高生にとっても得…

どこまでも癒される『ロールキャベツ』(森沢 明夫)

いまは、立ち止まってもええ時なんとちゃうん?(本文より) まれに出題される作家の5月の新作だわ。 出題者がこの本に気づくかは微妙だけど 学生の会話パートが多く結構使い易そう。 見晴らしの良い場所に椅子をセットして ゆるい時間を満喫する遊びが題材…

思いやりの心をはぐくむ『ひと箱本屋とひみつの友だち』(赤羽 じゅんこ)

友情と同情のさかいはどこにあるんだろう。(本文より) まれに出題される作家の6月の新作だわ。 タイトルだけじゃ全然わからないんだが、 読んでみたら予想外に深いテーマだった。 道徳的要素が多めなんだが読みやすくて 説教臭くもないから楽しみながら学…

大切な人をなくさないために『最高のともだち』(草野 たき)

人って、わからない。なんの問題もなさそうに見えても、本当は深刻な問題を抱えているのかもしれない。(本文より) たまに入試に出る作家の先月の新作だよ。 自力で受験勉強を強制させられる少年と 寂しすぎる境遇の少女が主人公の作品だ。 ひとの気持ちを…

出題されるかもしれない新刊本(2023年10月前後)

10月も注目の作品がザクザクな印象だ。 追加で判明したらこの記事に加えてくよ。 9/21発売 『リカバリー・カバヒコ』(青山 美智子) 夢のある都市伝説にすがる人びとを描く。 9/29発売 『はじまりは一冊の本! 』(濱野 京子) 手作り本との出会いが変える…

愉快、痛快『いじめにパンチ! あたしの小学校ライフ最後の戦い』(黒野 伸一)

出題実績が無さそうな著者の今週の新作。 高学年の読書によさそうな作品だったわ。 主人公が親の権力を笠に着た嫌な男子に 知恵を絞り立ち向かっていくストーリー。 負の連鎖を止めるにはどうすればいいか。 含蓄ありまくりなおばあちゃんの言葉に ぜひとも…

中受小説『中受離婚 夫婦を襲う中学受験クライシス』の話題など

セミフィクションで家庭の危機を描いた という新刊の情報がアマゾンで出てるな。 著者は『勇者たちの中学受験』の先生だ。 前作と同様に実話をもとにして描いてる。 公式によれば以下のような紹介文ですわ。 中学受験は「夫婦」の受験だ! 首都圏の受験率は過…

子どもたちに届け『夜光貝のひかり』(遠藤 由実子)

こういうのは知っておかなくちゃいけないことだけど、どこかでブレーキをかけないと、自分の心が持たない。(本文より) 戦争の話題を織り込んだ少年の成長物語。 出題実績のない作家の6月発売の新作だ。 奄美大島で起きた悲劇が超勉強になった。 主人公の…

名門校向け素材『百年の子』(古内 一絵)

子どもが読んでわくわくする物語は、大人が読んでもわくわくするものなのだ。(本文より) 割と入試に出る作家の先月発売の新作だ。 出版社を舞台にしたお仕事小説なんだが 完全大人向けで普通の小学生には難しい。 教育関係者に薦めたくなる一冊だったわ。 …

芽吹くリーダーシップ『アップサイクル! ぼくらの明日のために』(佐藤 まどか)

よきアドバイスや気づきにあふれた一冊。 割と入試に出る作家の来月発売の新作だ。 中学生達が夏休みの課題に本気で取組む という筋書きは出題者に好まれそうだよ。 テーマ的にもSDGsど真ん中で要注目。 子供たちがああでもないこうでもないと 話し合う…

大人に激推しの中受小説『ギフテッド』(藤野 恵美)

思うに、日本ではギフテッドプログラムが普及していない代わりに、中学受験とか進学塾が、その受け皿になっているんじゃないかな。(本文より) 失礼極まりないんだが読み終わった瞬間 「こいつスゲェこいつスゲェ天才だ」と 一息に言って著者略歴を凝視して…

中受小説『小さな挑戦者たち』の話題

『小さな挑戦者たち: ~サイコウの中学受験~』(騎月 孝弘) 10/4発売予定の中受小説なんだけど 既に何作品か出した実績のある小説家で かつ現役講師が描いたっていう新作だわ。 この情報だけでもそそられるじゃないの。 しかも公式によれば以下のような…

もう一度、あの場所で『八月の御所グラウンド』(万城目 学)

3ヶ月早く出ていれば2024年入試で 台風の目になっていたかもしれない作品。 入試ではあまり見ない著者の新作だけど 書店で目立ってたし出題者も多分気づく。 駅伝の話と草野球の話の二編が入ってる。 青春+駅伝=出題の公式に当てはまるし、 『十二月…

強烈にメッセージが響く『溺れながら、蹴りつけろ』(水瀬 さら)

あたしたちにとっては学校は世界のすべて。だからこの場所で生きづらくなったら、もうおしまいだ。(本文より) ラノベ寄りの作風だった著者の新作だわ。 中受界隈ではノーマークなんだろうけど この作品の訴求力は期待値を越えてたわ。 ただ、中盤までは結…

ヨソ者少女の真意『ぼんぼん彩句』(宮部 みゆき)

売れてる短編集等で主人公が子供の話は 大人向けの本でも入試でよく選ばれるよ。 ただ『ぼんぼん彩句』はベストセラーで 子供視点の短編も多いんで注目してたが あんまし素材の使い勝手は良くなさそう。 すごく惹かれるし面白くもあるんだけど、 サスペンス…

大輪の華『夜空にひらく』(いとう みく)

この界隈ではシリアスみくは注目度大と 断っておいたがさらに上をいかれたわ~。 純粋に物語として面白く得るものが多い。 かつ伝統文化の継承にも貢献しうる内容。 しかも花火にまつわる知識が増えるから 花火鑑賞をいっそう楽しめるようになる。 何かの賞…

これもイイネ『ひとっこひとり』(東 直子)

人は裏切るが、自分で身につけたものは自分を裏切ったりしない。(短編『覚えてる?』本文より) たまに入試に出る著者の7月の新作だわ。 歌人だけあって言葉選びがすごいっすね。 大人向けの作品だと思うが読みやすいよ。 品揃え豊富な12編が詰まった短…

ただでは終わらせない流儀『それは誠』(乗代 雄介)

こんなことして先生たちだましてんの、うちの班だけでしょ、絶対。(本文より) まれに出題される作家の新作なんだけど 芥川賞候補作なので注目度は高めだろう。 主人公が高校生って点も気になるところ。 大人向けの小説でも、学生視点の作品は 作問者に選ば…

出題されるかもしれない新刊本(2023年9月前後)

9月以降に出る作品はその年度の入試で 国語素材に選ばれることがほとんどない。 桜蔭中のようなごく一部の例外はあるが、 多くの先生方はもう作問に着手している。 そういう際どい時期の新刊本紹介ですわ。 なお、公立高校の入試問題では10月や 11月の…