中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

麻布で待ってる!『御三家ウォーズ』(佐野 倫子)

鉛筆一本で、人生を変えるんだ。麻布で待ってるよ。(本文より) 前記事紹介の『天現寺ウォーズ』収録作。 この本で最大のウエイトを占めてるのが 中学受験編にあたる『御三家ウォーズ』。 勉強が苦手な母親が高い目標をかかげる 息子のために死に物狂いで伴…

出題候補じゃないけれど『天現寺ウォーズ』(佐野 倫子)

絶対に失敗できないのよ。帰るところも、逃げるところもないの。......私たちは天現寺が“ホーム”なのよ。(本文より) 小学校なのに幼稚園と間違えられまくる 慶応幼稚舎を天現寺と呼ぶんだってな? その小学校お受験を描いた作品がこれだ。 本物の上…

ミステリアスであったかい『ぼくらは星を見つけた』(戸森 しるこ)

たまに入試でも出る作家の5月発売の本。 世にも不思議であったかい家族の物語だ。 魔法とかが出るわけじゃ全くないんだが どこか幻想的なストーリーが魅力だった。 作品の難易度的には小4以上が目安かな。 本自体が美しくできてて飾るとそのまま 粋なイン…

あっぱれ!優良図書『ぼくたちのいばしょ~亀島小 多国籍探偵クラブ~』(蒔田 浩平)

つまり、ぼくらの仲を裂いていた犯人は、意外と単純だったってこと。「お互いを知らない」、いわゆる「無知」ってやつだ。(本文より) 10歳前後の子どもに薦めてみたくなる 雑誌『日本児童文学』で激賞されてた本。 副題が「亀島小多国籍探偵クラブ」だし…

学びと共感あふれる『中学受験ウォーズ 君と私が選んだ未来』(佐野 倫子)

お受験・中受小説を出版した実績があり 2024年組母でもある佐野倫子先生の 昨日発売されたばかりの中学受験小説だ。 始めのほうは小説未満じゃねーのか?と イラっとしたんだが途中で著者の意図に 気づいてそっからは一気にのめり込んだ。 中盤からはと…

血が滾り放題の『エヴァーグリーン・ゲーム』(石井 仁蔵)

僕は十代の頃に学んだのだ。悔しさこそが何よりの原動力になることを。(本文より) ごく稀に読み終わった瞬間ウオォ!って 叫びたくなっちまう作品があるんだよな。 今月発売のポプラ小説新人賞の本もそう。 あまりに見事だったんで久々に吠えたわ。 東大卒…

優しさのキャッチボールに癒される『タイム・オブ・デス、デート・オブ・バース』(窪 美澄)

2023年入試でさっそく使われていた 窪先生の『夜に星を放つ』は有名だよな。 そんな著者の昨年12月に発売された本。 親に捨てられた姉妹のストーリーだけど ちょっと子供にみせたくない部分もあり 紹介するか今の今まで迷ってたんだよな。 ま、心の奥…

出題されるかもしれない新刊本(2023年12月前後)

12月の新刊本はちょっと少な目っぽい。 追加で判明したらこの記事に書き足すよ。 11/25発売 『わたしに続く道』(山本 悦子) 小5視点で日本編とケニア編がある模様。 12/8発売 フレーベル館ものがたり新人賞大賞 『トモルの海』(戸部 寧子) 野球好きの…

試される絆『東家の四兄弟』(瀧羽 麻子)

人間は、己の話を真摯に聞いてくれる相手に悪い感情は抱かない。(本文より) 『博士の長靴』を書いた瀧羽麻子先生の 10月に発売されたばかりの最新作だわ。 この先生は頻出度◎なんで注目したいね。 父親と次男が占い師という一家の日常を 視点をクルクル…

経験を今につなげる『伝言』(中脇 初枝)

みずからをわたくしと呼んだのには驚いた。作業後もお互いに「ごきげんよう」とあいさつをかわしている。(本文より) 『神に守られた島』が頻出だった著者の 8/23に発売された評判の作品ですわ。 名門女学校に通う今でいう中3が主人公。 大戦末期から…

どこまでも尊い生き様を感じる『一線の湖』(砥上 裕將)

誰かのすごく良いところは、実は欠点のように見えるものの中に隠れてる。(本文より) 今回紹介するのは来月13日発売予定で、 入試頻出作『線は、僕を描く』の続編だ。 序盤で小1に水墨画を教える場面があり やさしく基本を説明してくれるおかげで 先に今…

トコトン元気にしてくれる『あなたはここにいなくとも』(町田 その子)

あなたたちは可能性に溢れているのよ。恋も、友情も、夢も、何もかもがこれからなの。(本文より) 今年『宙ごはん』が頻出になった作家の 2月に発売されたオトナの短編集ですわ。 ちょっと子供に見せたくない話も多くて 紹介するかどうか迷ったまま現在に…

ままならない少女たち『どうしようもなく辛かったよ』(朝霧 咲)

道徳的な正しさは、所詮他人事の時だけまかり通るのだ。(本文より) 受験勉強しながら高3で小説現代新人賞。 で、今は京大生ってこりゃまたスゲーな。 今回の紹介作品は9月発売のデビュー作。 中学のバレー部員たちを描く短編集だわ。 さわやかとは対極に…

スランプの先へ『八秒で跳べ』(坪田 侑也)

「覚えておきなさい。不調のときは、成長できる最大のチャンスだ」(本文より) 慶應普通部で労作展のために書いた本で デビューして今は医学部生ってナニコレ。 中3夏休みの自由研究が商流に乗るとか、 そんだけで驚きだけど、その後も凄すぎ。 そんな作家…

【番外編】2024年高校入試 国語出典予想20選(2023年1月~2023年10月発売)

試しに高校入試版の予想も作ってみたよ。 中・高入試ともに選書の傾向は似てるが、 高校は10月の作品も割と出ているから、 中学入試版とは少し違う顔ぶれになるよ。 まぁ、そう当たるもんじゃないだろうな。 2024年高校入試国語出典予想20選 (タイ…

学ぶことの意味がしっかりと伝わる『クロワッサン学習塾』(伽古屋 圭市)

学習は知識ではなく、その先にある“考える力”を、究極的には“よりよい人生”を掴むためにあるものではないか。(本文より) 入試とは無縁っぽい作家の6月の新作だ。 コチラで紹介されてたんで読んでみたよ。 意欲ある元教師が子供達の未来のために 自分に出…

人をたやすく決めつけないで『川のほとりに立つ者は』(寺地 はるな)

あの人だけじゃない。かわいそうな女に手を差し伸べたい男っていっぱいいるの。なんでだかわかります?自信がないからですよ。(本文より) 入試頻出作家の昨年10月の作品ですわ。 本屋大賞でも9位というベストセラー本。 手にした出題者もいただろうと思…

新鮮な驚きもある『ケモノたちがはしる道』(黒川 裕子)

人間にとって得になるか、損になるか。自然とはそれだけで割り切れてしまうものなのだろうか。(本文より) たまに入試に出る作家の来週の新作だよ。 同し時期に2冊でるってんだから驚きだ。 11/9発売 『ケモノたちがはしる道』 11/14発売 『オランジェット…

もう、世間知らずじゃいられない『宙わたる教室』(伊与原 新)

待っているんですよ。我々定時制の教員は、高校生活を一度あきらめた人たちが、それを取り戻す場所を用意して待っている。(本文より) 地学小説という新しいジャンルの開拓者、 伊与原先生の10月に出たばかりの本だ。 定時制高校の異色の文化部が発表の場…

めげない少女が駆ける『ややの一本 剣道まっしぐら! 』(八槻 綾介)

勝ちたいと思うなら正しい努力をしろ。(本文より) 今作でデビューした作家の5月に出た本。 ポプラズッコケ文学新人賞の大賞作品だ。 勢い200%!という感じの剣道少女が 願ってやまない目標のために全力を出す。 主人公の魅力ってのが突き抜けてたな~…

思わず声援を送りたくなる『リカバリー・カバヒコ』(青山 美智子)

でも順位なんてさ、いつだって、狭い世界でのことだよ。(本文より) 入試頻出作家の9月に発売された新作だ。 都市伝説に心を動かされる人々を描くが SFチックな話ではまったくないんだな。 素材にする際の妨げになる要素はないし 第一話と第四話なんて特…

たましいの叫びを聞け『ルール!』(工藤 純子)

大人になる前にあきらめることを覚えるなんて、正しいはずがない。(本文より) 入試頻出作家の本日発売された新作だわ。 トラブル当事者になってしまった少女が 理不尽なルールの存在を初めて意識して 校則の見直しに向け動き始めるんだな~。 中学生達が校…

出題されるかもしれない新刊本(2023年11月前後)

11月にも面白そうなのが続々と来るな。 追加で判明したらこの記事に加筆するよ。 10/26発売 『ルール!』(工藤 純子) 理不尽な校則に立ち向かう中学2年生達。 10/30発売 『アオナギの巣立つ森では』(にしがき ようこ) 森の中で凄いものを見つけた二人…

あの先生のお株を奪うような『かたばみ』(木内 昇)

楽な道を選べば、いっとき救われるんや。けどな、努め続けておったらたどり着けたはずの場所から、永遠に切り離される。(本文より) 読友さん達がやたら激賞するもんだから 思わず手にしてみたが確かに大当たりだ。 何が正しいか徹底して考えさせられるよ。…

心に勇気を灯してくれる『ひとりかもしれない』(岩瀬 成子)

わりと入試に出る作家の6月発売の作品。 難易度は3~4年でも十分いけそうだよ。 この先生ってば、いつも思うんだけどよ、 中学年の子に心情の揺れを伝えるのって 言葉選びからして半端でなく難しいけど 今作でも見事にやってくれてるんだわ~。 特に子ど…

アクシデントが最高すぎる『カーテンコールはきみと』(神戸 遥真)

まったくちがう役をやれば自分を変えられると思っていた。でも実際はそんな簡単じゃない。(本文より) 出題はまれだけど注目してる作家による 今週のなかばに書店で並び始める新作だ。 意外な組み合わせの二人が困難を越えて 崖っぷち演劇部に新しい風を送…

【2024年入試版】国語出典予想ランキング(2022年9月~2023年8月発売)

過疎自慢のサイトからひっそりお知らせ。 作品の優劣ではなく出題者が選びそうか。 この点のみで順位付けしたリストが以下。 全てここでレビューを書いた作品たちだ。 表の説明はちょっと真面目に書いてみる。 出典予想ベスト100(1~50位) 私の勘で選んだ…

画期的な中学受験小説『小さな挑戦者たち』(騎月 孝弘)

4人の中学受験生に寄り添うストーリー。 この子たちが、みんないい子なんですわ。 読めば応援せずにいられなくなるほどに。 主人公もがんばり屋さんで共感できるし。 中学受験の心構えを伝えることを主眼に 描かれた小説って点では素晴らしいな~。 使えそ…

ラストがそそる、技アリ素材『後ろの席の菊池さん』(名取 佐和子)

有力作家によるちょうどいい長さの話が いくつも詰まっている季刊『飛ぶ教室』。 ここからの出題が割とあるのは有名だな。 今回は71号から74号が検討対象だよ。 発売時期は昨年の10月から今年の7月。 特に素材文適性が高そうだったのがコレ。 短編の…

どえらいコラボ効果『川滝少年のスケッチブック』(小手鞠 るい)

九十代のおじいちゃんはぼくの隣に座っているのに、スケッチブックのなかでは、十二歳の少年が受験に挑んでいる。(本文より) 著者の祖父が描いたスケッチを元にして、 戦時中の生活をリアルに伝える異色作だ。 絵だけでも小説だけでもできないことが コラ…