中学受験と児童書と

「中学受験」と「児童書」について真面目に考え、気楽に吐き出す

白いほうの代表作『島はぼくらと』(辻村 深月)

好きなことを続けるためには、好きじゃないこともたくさんやっといたほうがいいよ。(本文より) 2013年に出た優先度Aランクの旧作。 辻村深月先生の作風は黒いのと白いのに 大別できるけど、これは頻出の白い方だ。 地方に住む高校生たちの瑞々しい日…

人生を豊かにするアイデア『今日もピアノ・ピアーノ』(有本 綾)

自分で考えて、自分で決めたほうが、後悔しないし、なにより一生懸命になれるからね。(本文より) 小川未明文学賞大賞作品がついに出たよ。 この賞は受験界でも注目度高めだろうな。 嫌々受験塾通いしている少年の話だから ああ、後半で自己主張して撤退す…

読書が初級の高学年には『クラスメイツ』(森 絵都)

あたしを不安にさせる影は、他の誰でもない、あたし自身がこしらえたものだ(本文より) 2014年に出た優先度Sランクの旧作。 これも受験生にはお馴染みの作品だろう。 これまで何度も入試で使われてきてるが 近年も出題がありチェックは外せないよ。 平…

変幻自在な筆さばき『椿ノ恋文』(小川 糸)

「ありがとう、って言葉で人生を終えられたら、幸せだよね」(本文より) たまに出題される作家の11月の新刊だ。 久しぶりに代書屋の鳩子が帰ってきたよ。 今作でも人の心を動かす手紙の書き方が 小説を読みながら楽しく学べちまうわ~。 ま、今作は微妙に…

新星きらめく『私が鳥のときは』(平戸 萌)

それぞれが自分の場所で、受験生として全力を尽くそうと約束していた。(『私が鳥のときは』の本文より) この作品がデビュー作っていうことだし 中学受験界隈では多分ノーマークだろう。 氷室冴子青春文学賞の大賞作品がこれだ。 受賞作『私が鳥のときは』…

まだまだ使われそうな『大きくなる日』(佐川 光晴)

「ご両親から支持されていないと思ったら、子供が自分の力を伸ばせるわけがないじゃありませんか」(本文より) 2016年に出た優先度Aランクの旧作。 これはテキストや模試でお馴染みだろう。 入試でも忘れたころに出てくる作品だし 普通の新作より先に…

アメリカの自由さが際立つ『空と星と風の歌』(小手鞠 るい)

わたしが生まれ、育ってきた日本に、こんなふうに生まれて、こんなふうに育って、こんなにも悩み、苦しんできた人がいたなんて、想像したこともなかった。(本文より) たまに出題される作家の11月の新作だ。 この先生は発刊のペースがものすごいな。 アジ…

定番の駅伝小説『あと少し、もう少し』(瀬尾 まいこ)

自分の力が発揮できる場にいるって大事だろ。(本文より) 2012年に出た優先度Sランクの旧作。 頻出の瀬尾まいこ先生の本では最注目だ。 やっぱしチームの心を合わせる話になる 駅伝や合唱モノは素材の定番中の定番よ。 この作品では先生の役どころも面…

解りあうことの難しさ『アナタノキモチ』(安田 夏菜)

わりと入試に出る作家の先月に出た作品。 この先生は『二月の勝者』の参考文献に なっている 『むこう岸』にも要注目だよ。 今作は相手の気持ちを掬い取ったうえで 尊重することの難しさと大切さを訴える。 物語のキーマンになるのは支援級の少年。 このテー…

出題されるかもしれない新刊本(2024年1月前後)

1月の新刊はそれなりにある感じですわ。 追加で判明したらこの記事に書き足すよ。 1/10発売 『風に立つ』(柚月 裕子) 傑作の予感!少年の更生を描く家族小説。 1/18発売 『となりのきみのクライシス』(濱野 京子) どうなる?トラブルまみれの6年生たち…

想像力に圧倒される『空想の海』(深緑 野分)

読むことによって世界は広がり、あり得ないものが見え、遠くへ旅し、一度の人生では経験しえない物語を味わえる。(本文より) 5月発売の不思議要素が強めの作品だよ。 麻布の2021年入試で界隈を驚かせた 『緑の子どもたち』所収の短編集ですわ。 『緑…

感情をブルンブルン揺さぶる『腹を空かせた勇者ども』(金原 ひとみ)

複雑な感情に踊らされて泣いたり怒ったりすることのない人生を送りたい!(本文より) 20歳で芥川賞を受賞したが中受界隈で 注目されてない作家の6月に出た新作だ。 コロナ禍の中高一貫女子校が舞台なんで 試しにと読んでみたがびっくりしたわ~。 感情を…

桜蔭の出題者に選んで欲しい名作たち

普通なら入試の国語素材に選ばれるのは、 前年の夏までに発売された作品になるが、 女子最難関の桜蔭はひと味違うんだよな。 2020年出題 前年の7月25日発売 『思いはいのり、言葉はつばさ』(まはら 三桃) 2021年出題 前年の11月14日発売 『あしたのことば…

【レベル別】中学受験生向け推薦図書(旧作42作品)

相変わらず閑散としたサイトから呟くよ。 旧作の推薦図書一覧ってのも作ってみた。 リストの説明は真面目に書くことにする。 優先度Sに8作品、Aに12作品、Bに22作品 長年愛されてきた旧作を中心とした中学受験生向けのお薦め本リストです。すべて当サイトか…

音楽と絆が生み出すもの『ラブカは静かに弓を持つ』(安壇 美緒)

今年の本屋大賞2位になったバカ売れ本。 スパイという語を見てチェック対象から 外してた作品だが読書感想文コンクール 高校の部課題図書にもなったんで読んだ。 書店の目立つ場所にずっと置かれてたし 高校課題図書は割と入試で使われるから たぶん作問者…

異邦人たちの葛藤『M』(岩城 けい)

どいつもこいつも、人種を見ないで人を見ろ!(本文より) たまに出題される作家の6月に出た作品。 父の仕事の都合でオーストラリアに移り のちに母と姉が帰国しても現地に残ると 決意したマサト少年シリーズの最終巻だ。 現地に溶け込もうとする意志を阻む…

終盤がとくに刺さる『鈴の音が聞こえる 伝えるということ』(辻 みゆき)

同じ年齢で、同じ障害をかかえてると、親兄弟でもわかってもらえない自分の気持ちを、こいつだけはわかってくれる、って思えるときがあるんだよな。(本文より) たまに出題される作家の昨年11月に 出た新シリーズで既に3冊が発売済み。 本の外見はもう完…

非合法の渦中で『金環日蝕』(阿部 暁子)

受験界では『パラ・スター』で知られる 阿部暁子先生の昨年10月に出た本だよ。 これは読友さんたちの評判も凄かったわ。 ミステリ的要素が強めなので素材文には さほど向かないけど面白さは保証できる。 展開の妙が魅力だが会話のノリもいいよ。 尻もちを…

境界線の子どもたち『付き添うひと』(岩井 圭也)

これまでのことより、今からどうするかが大事なんです。(本文より) 『生者のポエトリー』が界隈で注目され、 出題もあった作家の昨年9月に出た作品。 主人公は未成年の事案にこだわる弁護士。 大人を弁護する場合は弁護人、子どもの 場合は同じ仕事でも付…

真心が芯まで響く『水車小屋のネネ』(津村 記久子)

性格のいい友達を見つけるのは、子どもの人間性がまだ剝き出しのまま混ざり合っている小学校ではとても難しい。(本文より) たまに出題される作家の3月に出た新作。 紹介作品の中では最大級のボリュームだ。 あらすじに「しゃべる鳥」とあるんだが 動物視…

無敵の笑みに誘われて『トモルの海』(戸部 寧子)

想像や夢が、現実を追い抜く瞬間だってあるわ。(本文より) フレーベル館ものがたり新人賞大賞作品。 この賞は村上雅郁先生や蓼内明子先生を 輩出している由緒あるもので注目度大だ。 今作は小5の野球少年が不思議な少女に 出会い忘れられない日々を過ごす…

全能男子、狼狽える『ぼくらはまだ少し期待している』(木地 雅映子)

季刊誌『飛ぶ教室』でも紹介されていた 2022年10月発売のYA小説ですわ。 特別感ありまくりな進学校の高3男子が 同級生を探して思わぬ場所に行くって話。 チャラい内容かと思えば深いネタもあり 生きた経済や心理学、それに心理術まで 学べてしまう…

麻布で待ってる!『御三家ウォーズ』(佐野 倫子)

鉛筆一本で、人生を変えるんだ。麻布で待ってるよ。(本文より) 前記事紹介の『天現寺ウォーズ』収録作。 この本で最大のウエイトを占めてるのが 中学受験編にあたる『御三家ウォーズ』。 勉強が苦手な母親が高い目標をかかげる 息子のために死に物狂いで伴…

出題候補じゃないけれど『天現寺ウォーズ』(佐野 倫子)

絶対に失敗できないのよ。帰るところも、逃げるところもないの。......私たちは天現寺が“ホーム”なのよ。(本文より) 小学校なのに幼稚園と間違えられまくる 慶応幼稚舎を天現寺と呼ぶんだってな? その小学校お受験を描いた作品がこれだ。 本物の上…

ミステリアスであったかい『ぼくらは星を見つけた』(戸森 しるこ)

たまに入試でも出る作家の5月発売の本。 世にも不思議であったかい家族の物語だ。 魔法とかが出るわけじゃ全くないんだが どこか幻想的なストーリーが魅力だった。 作品の難易度的には小4以上が目安かな。 本自体が美しくできてて飾るとそのまま 粋なイン…

あっぱれ!優良図書『ぼくたちのいばしょ~亀島小 多国籍探偵クラブ~』(蒔田 浩平)

つまり、ぼくらの仲を裂いていた犯人は、意外と単純だったってこと。「お互いを知らない」、いわゆる「無知」ってやつだ。(本文より) 10歳前後の子どもに薦めてみたくなる 雑誌『日本児童文学』で激賞されてた本。 副題が「亀島小多国籍探偵クラブ」だし…

学びと共感あふれる『中学受験ウォーズ 君と私が選んだ未来』(佐野 倫子)

お受験・中受小説を出版した実績があり 2024年組母でもある佐野倫子先生の 昨日発売されたばかりの中学受験小説だ。 始めのほうは小説未満じゃねーのか?と イラっとしたんだが途中で著者の意図に 気づいてそっからは一気にのめり込んだ。 中盤からはと…

血が滾り放題の『エヴァーグリーン・ゲーム』(石井 仁蔵)

僕は十代の頃に学んだのだ。悔しさこそが何よりの原動力になることを。(本文より) ごく稀に読み終わった瞬間ウオォ!って 叫びたくなっちまう作品があるんだよな。 今月発売のポプラ小説新人賞の本もそう。 あまりに見事だったんで久々に吠えたわ。 東大卒…

優しさのキャッチボールに癒される『タイム・オブ・デス、デート・オブ・バース』(窪 美澄)

2023年入試でさっそく使われていた 窪先生の『夜に星を放つ』は有名だよな。 そんな著者の昨年12月に発売された本。 親に捨てられた姉妹のストーリーだけど ちょっと子供にみせたくない部分もあり 紹介するか今の今まで迷ってたんだよな。 ま、心の奥…

出題されるかもしれない新刊本(2023年12月前後)

12月の新刊本はちょっと少な目っぽい。 追加で判明したらこの記事に書き足すよ。 11/25発売 『わたしに続く道』(山本 悦子) 小5視点で日本編とケニア編がある模様。 12/8発売 フレーベル館ものがたり新人賞大賞 『トモルの海』(戸部 寧子) 野球好きの…